骨髄移植とそのリスク

[骨髄移植]

骨髄は骨の内部にあるゼリー状の器官で、人間の場合、血液の成分である赤血球、白血球、血小板といった細胞がここで作られます。血液中の細胞は、人体を構成するさまざまな細胞の中でもかなり特殊に分化した単機能の細胞であり、それ自身分裂する力をもちません。実際には造血幹細胞という、分裂し増殖する単一の細胞が分化することによって赤血球や白血球が製造されます。健康な人間(ドナー)の幹細胞をじゅうぶんな数だけ患者に移植すれば、あとは患者の体内で正常な血液が必要なだけ造り出されるというのが骨髄移植の基本的な原理です。なお、血液と直接関係ないある種の代謝異常に骨髄移植が有効な理由は、造血幹細胞の一部は体内の臓器に運ばれ、そこで分化して臓器の材料となるため、と考えられています。
 骨髄移植は正常な白血球を作れなくなる血液のガン、つまり白血病の治療法として国内でも年間千件以上行われています。名前からすると臓器移植のような手術を想像しますが、実際には輸血に近いといえるかもしれません。具体的にはドナーの腰の骨(腸骨)に注射針を差し込んで骨髄を抜き取り、それを調整した後で患者に点滴します。また、いったん減ったドナーの骨髄は完全に回復します。

[骨髄移植のリスク]

 

【拒絶反応】ドナーの骨髄は患者の身体から見れば異物なので、免疫機構によって攻撃されます。これを押さえないと、せっかく移植した臓器(この場合は骨髄に含まれる造血細胞)が患者の身体の中に定着し、機能することができません。これは臓器移植に共通する最も大きな問題です。

【前処置毒性】骨髄移植を行う場合、拒絶反応のリスクを押さえるために、事前に放射線を照射したり抗ガン剤を投与することによって、患者のもっている免疫機能を破壊しますが、これらはいずれも患者の身体に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。かといって、これらの免疫破壊が十分でないと、拒絶反応が起こったり、骨髄移植後も患者由来の血液が生産される混合キメラという現象が起き、治療目的を果たせなくなります。

【感染症】移植された骨髄から新しい細胞が十分育ち、新たな免疫能力が獲得されるまでの間、患者の身体はまったく無防備な状態になります。ちょうどエイズと同じような状態(日和見感染)になるわけです。このため、健康な状態では全く問題にならない感染症も致命的になります。従って、骨髄移植後の患者は長期間無菌室で過ごす必要があります。

【GVHD】Graft Versus Host Disease、移植片対宿主病は、ちょうど拒絶反応の裏返しです。移植された骨髄はそれ自体免疫機能をもっているので、宿主、つまり患者の身体を異物とみて攻撃してきます。これを押さえるために患者とドナーの組織の相性が合う必要があります。そのための目安となるのがHLA型です。

→治療最前線第1弾「先天性代謝異常症と骨髄移植」
 東海大学の矢部先生が具体的な治療法などを解説
 第2弾第3弾にもMLDの骨髄移植に関しての情報
 があるので必見

→HLA型

→骨髄バンク

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